Keith Emerson RIP
今週は長かった。やけに、しんどかった。仕事では新しいこと、面白いことが沢山あったが、心の底からは喜べない不思議な暗さを振り払えないでいた。その理由は分かっている。だが前半は、状況が分からず、後半は、そうだったのかという感じで。
キース・エマーソンが逝ってしまった。しかも、銃で自分を撃って。なぜ?どうして?あんな自信の塊のようなミュージシャンが自らの存在を自分で否定するとは。彼がそこまで思い詰めるには、いったい何があったのか。4月には日本公演の予定まで組まれていて、そのプロモーション・ビデオにも出演している。それなのに、なぜ?
支えるものの無い空虚さは、ようやく状況が分かってくると、やはりそうかという虚しい諦めに変わる。キースは完璧な完璧主義者だった。常に最高のロック・キーボード・プレイヤーでいなければならなかった。だから、それが出来なくなると、王者キース・エマーソンではいられなくなってしまったのだ。
ミュージシャンとして、ほかに道はいくらでもあったと思う。バンドのプロデューサーとか、コンポーザーとか、後進を育てるディレクターとか…。でも、キースはあくまでも現役のプレイヤーでいたかったのだ。気持ちは分かる。
ロック・ギタリストからはまったく異次元の存在だった。ステージ上にタンスのように並べたムーグ(当時は「モーグ」と読んだ)シンセサイザーをケーブルの抜き差しまでしながら使いこなし、ピアノは立って弾く、変拍子は当たり前、ピアノ線は手で掻き鳴らす、ハモンド・オルガンは傾けて引き摺り回す、ミニムーグを持って走り回る…。誰もキースのようには弾けない、というのを誰も疑っていなかった。
クラシックを題材にロックを創る、という分野の先駆者である。だから、グレッグ・レイクの「Luckey Man」や「The Sage」が弾けるようになっても、キース・エマーソンに近付けたわけではない。近付く方法すらない、というのが限りなく正しい。
ピンク・フロイドのリック・ライト、ドアーズのレイ・マンザレク、ディープ・パープルのジョン・ロード。あのころのロック・キーボード・プレイヤーがまた一人減ってしまった。
キーボード・ジーニアス、キース・ノエル・エマーソン Rest In Peace.
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