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2010年8月 9日 (月)

オーケストラで迫る「タルカス」

 新聞休刊日だったのでニュースが気になり、時間のある時に朝日新聞のサイトを見ていって、とんでもない記事にぶつかった。「オケで迫る『タルカス』、吉松隆、プログレの名曲を編曲」

 エマーソン・レイク&パーマーの組曲「タルカス」に、「作曲家の吉松隆がオーケストラの豊かな響きで迫った」とのこと。「プログレの人しか知らない名曲や、クラシックの人が独占している名曲が多すぎる。なんてもったいない」…ぉぉぉ、そのとおり。

 「吉松が編曲した『タルカス』は3月、藤岡幸夫率いる東京フィルハーモニー交響楽団が初演。このライブ録音を含むCDも先月発売された」とか。まったく知らなかった。もっと自分にできることはないのか。

 EL&Pは、とにかくポテンシャルのボルテージが高くて、火花の散っているような曲ばかり。キース・エマーソンの神業的なキーボード、グレッグ・レイクの冷静なベースラインと神秘的なボーカル、曲の構成に忠実なカール・パーマーのドラミング。特にこの「タルカス」なんかはそうだ。

 ちなみに、想像上の怪物である「タルカス」の名前は、デイヴ・ブルーベックの「ブルーロンド・ア・ラ・ターク(Blue Ronde a la Turk)」から来ていたと、自分では勝手に思っている。この「ブルーロンド~」は、日本のテレビCMなどでも有名な5/4拍子の名曲「テイク・ファイブ」が収められているブルーベックのアルバム「タイム・アウト」に一緒に入っている、これまたとんでもない名曲である。(日本では当時のCBSソニーが「トルコ風ブルーロンド」という邦題にしてしまったので、何か怪しげな曲に思われたフシもある…)

 そして、もちろん聞く人が聞けばわかるが、当時ザ・ナイスのキース・エマーソンは、この名曲を強引にジャズの世界から引き剥がし、ロックビートの円舞曲「ロンド'69」に仕立ててしまう。「タルカス」は、間違いなくこの延長線上にあった。

 時代背景から言えば当時はシンセサイザーの創成期で、MOOGも「モーグ」と書かれていた頃。オシレータ音源のアナログ・モノシンセの時代で、キースもコードを埋めるにはハモンドオルガンを併用していた。ライブアルバム「展覧会の絵」はその証拠である。サンプリング音源のデジタル・ポリシンセが出てくる前の、涙なしには語れない過去だ。

 ちなみに、この「タルカス」をターゲットにして、当時の日本のロックシーンを率いていた一人である成毛滋が同時代に作ったのが「フライド・エッグ・マシーン」に収められている「オケカス」である。ベースは高中正義、ドラムスは つのだひろ。これまたすばらしい作品で、今聴くと曲名からもパロディだと思われかねないが、当時これは間違いなく世界への挑戦の領域だった。紹介した「オケで迫る『タルカス』」という記事は、たぶんそこまでわかって書いているタイトルだと思う。

 昔はよかったなぁなどと言うつもりはない。ただ、評価されて残るものは残るのだということを、ずっと言っておきたい。

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