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2010年11月21日 (日)

EとCのレイラ

 今や知る人ぞ知る(知らない人はどうせ知らない)20世紀の名曲「いとしのレイラ」。クリーム解散後、結局は「ジャック・ブルース抜きのクリーム」にスティーブ・ウィンウッドを加えたようなブラインド・フェイスが、これまたスーパー・ジャイアンツすぎて崩壊。疲れ果ててアメリカ、それも南部に渡ったクラプトンが現地のメンバーに恵まれて結成したのが、デレク&ザ・ドミノスだ。

 堅実なベースラインのカール・レイドル、乾いた音と巧みなフィルインのジム・ゴードン、どうみても遠慮がちなボビー・ウィトロック。アルバムのライナーノーツには、故デュアン・オールマンまでメンバーとして記載されていた。「レイラ」の前半終盤でクラプトンの遥か上空を舞う彼のスライドは超絶品。

 ところが、そもそもクラプトンの方をコピーしようとしても簡単には行かない。まずあの有名なイントロ。5弦の開放Aと3C、4弦の開放Dと3Fをそれぞれハンマリング・プリングオフでつなぐ幾何学的な長方形フレーズ。終わり方からしてDmキーだとわかる。バックはDm-C-B♭と、ルート+5度の重音で降りてきて、5弦1B♭をプリングオフ、6弦5Aや3Gを経由して5フレットポジションのDmに戻る。ここは全くオーソドックス、クリーム時代にも何曲かこういう形はある。加山雄三もステージでよく自分の「夜空の星」のツナギめにウケ狙いで「レイラ」のメインフレーズを挟んで弾くが、それもどちらもDmだから違和感なく出来ること。

 問題は次だ。「さびしい時は何してるんだい?/誰もそばにいてくれなくて」ここは何とC♯m7から始まる。ウソ! Dmキーのメインフレーズからいきなり転調して、しかもたった半音下に行くなんて。さらにG♯m7に一旦引いてから、C♯m7に続いてなんとC-D-E。C♯は居場所がない。構成音にすら入っていない。このパターンはまるでEキーのエンディングだ。その後は一気に、F♯m-B、E-Aとお馴染みの展開でまた「レイラ!」のメインフレーズDmに自然に戻る。一体どうやって作ったんだろう。メロディだけ先に出来て、コードは後から組み立てたに違いない。

 じつは、メインフレーズのバリエーションのような2オクターブ上のテーマフレーズに、その後の謎を解く鍵が潜んでいる。2弦10Aと13C、1弦10Dと13Fを長方形にハンマリングしてプリングオフするのは全く同じだが、魂の叫びのようなチョーキングの後に、メインフレーズには出てこなかったE音が1弦12フレットで出てくる。これが伏線中の伏線。これがまるで全く別々の曲のようなレイラ前半とレイラ後半を見事につないで行くのだ。(もっとも実際には最初から別々の曲だったようで、拾われた立場のボビーがスタジオの空き時間に自分の為の曲を作っていてクラプトンに見つかり、それいいじゃないかと後半に採用されたらしい)

 つまりレイラ前半の終盤は、Dm-B♭-Cをバックに高低2つのDm長方形フレーズが曲のフレームをがっちり固めて、延々とギタリストの共演が続くのだが、最後に後半に向けてスローダウンしてデュアンが降りて行く行く途中の最後の最後に1弦12Eから8C(2弦13Cかも知れない)が出てくる。もっと言うと、Cへ行くためにEが出てくる。「ド」へ行くために今まで出て来なかった「ミ」が出てくる。ボビーがピアノに両手を降ろす直前、この時点で曲はCキーになっているのだ。曲のクレジットは無慈悲にも「クラプトン&ゴードン」になっているが、ボビー・ウィトロックの名曲「レイラ後半」は、ほとんど白鍵のハ長調ナンバーである。

 ピアノなどの鍵盤楽器があればすぐわかる。右手をドミソに置く。左手を下のドでオクターブに広げる。レイラ後半出だしの感じで和音を弾き、右手をそのまま、左手を2鍵上げてミのオクターブにすれば、「レイラ」後半の最初が弾ける。ギターなら普通にCでダーンダーンダと弾いて、次にその握りのまま6弦開放のEもドーンドーンドと強調すれば同じ感じになる。つまり、C-C/Eで始まるのだ。あとはFへ行ってB♭に降りる。これは後半ずっと同じ。これほどまでに、この曲のEとCは重要だ。

 デュアン・オールマンの技はとんでもなく別世界だが、いつかステージでイントロの低い方、高い方を続けて弾いて、コードを弾きながら渋い声で「レイラ!」と叫び、ギタリストどうしのバトルを経てから静かにギターを降ろし、そのまま歩いてピアノの前に座って後半を弾く、というのが夢で見た夢。

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