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2015年12月30日 (水)

トヨタ・シエンタのCMに「マシュ・ケ・ナダ」

強烈なピアノの左手フレーズから始まるイントロに、思わずテレビを見てしまった。トヨタ・シエンタのCMに、セルジオ・メンデスの「マシュ・ケ・ナダ」が使われている。15秒CMではほとんどピアノのイントロだけで終わってしまうが、トヨタの公式サイトには「シエンタ・ギャラリー」があり、フルスペックのTVCMやイメージムービーが「これでもか」と載っていて、「オー、アリアーアォ」が全部聴ける。もちろん、期限の保証はないにしても。

シエンタは、セルメンそっくりの顔をしている。いや、逆か。こういうデザインにしたら、CMの曲はこれしかないだろう、という展開だったのかもしれない。

手元に、「万国博のセルジオ・メンデスとブラジル'66」というレコードがある。サイズはEP盤だが、33・1/3回転でA面2曲メドレー+1曲、B面2曲のミニアルバムになっている。「♪こんにちは、こんにちは、世界の国から~」という三波春夫の唄が思わず出てくる、1970年の大阪万博。その千里丘陵万博ホールでの4月5日のライブを収めたものだ。ライナーノーツの書き出しは以下の通り。

「セルジオ・メンデスは、エメラルドやコーヒーと並んで、ブラジル始まって以来の最上級の輸出だ」、とはあちらの評論家の言ですが、まさしく彼はそれまでごく一部のファンや研究家の間でしか興味を持たれていなかったブラジルの音楽を、広く世界のポピュラー界に紹介してくれたと言えるでしょう。

大阪という土地柄、ツカミの挨拶が面白い。「モカリマカ?」、儲かりまっか?と聞いているのだ。ここで会場はワッと沸く。続いて、「ミナサン、コンバンワ。セルジオ・メンデス ト、ブラジル・シクスティシクス デス。ドウゾ、ヨロシク」で大歓声。いいですね~。45年前ですよ。

シエンタCMに使われているのはスタジオ盤に違いないが、このライブ盤のエンディングが「マシュ・ケ・ナダ」なのだ。曲の後半には恒例のメンバー紹介もあり、そのたびに会場が沸く。

ここからが本題。ちょうどこの時期から、オーディオ装置業界は「4チャンネル・ブーム」に入る。1970年の「サンスイQS-1」がその火付け役だった。それまでの前方左右2チャンネルに、後方左右2チャンネルを加え、音を前方左右の線から、前後左右の面にしてみせた。これは確かに、当時としては凄かった。

「サンスイQS-1」には、ライブでのステージと客席を再現する「ホール」モードと、スタジオ録音での各楽器を周囲に定位させる「サラウンド」モードがあった。当時盛んだったオーディオフェア等のイベントで、盛んにこの「ホール再現」に使われたのが、このセルメン万博アルバムだったのだ。クールなアレンジの「フール・オン・ザ・ヒル」なんかは、当時はビートルズのオリジナルを知らない人の方が多かったに違いない。ホントです。

もうひとつ、「ホール再現」によく使われたのが、サイモン&ガーファンクルの「バイ・バイ・ラブ」。名アルバム「明日に架ける橋」の中の唯一のライブ曲だが、これも見事に客席の手拍子が後ろから聴こえた。ちなみに、この歌の中で2コーラスめの”Bye bye sweet cares”を、ふたりのどちらかが”Bye bye hapiness”と歌詞を間違えているのだが、どちらかは今聴き直しても判らない。声はたぶんアーサーだと思うが、もう時効だ。それほど、当時のポップス少年はマジメに英語を聞いていた、ということですよ。

そして、「サラウンド効果」によく使われたのが、デイブ・ブルーベック・クワルテットの「テイク・ファイブ」。ブルーベックのピアノと、ポール・デズモンドのアルトサックスが前の左右にいて、ジョー・モレロのドラムスは前後左右。ドラムソロのパートなんか、まるで自分が叩いているかのようにドラムスが周囲に定位している感じだった。感激したなぁ。もちろん、フェアの会場などでは高級なアンプやスピーカーを使っているから、というのがあるとしても。

その後、おきまりの各種方式や規格の乱立・対立などがあって、さらに日本の住宅事情からしても部屋の四隅にスピーカーを配置して大音響で楽しむという文化は普及定着せず、唯一の可能性であった車内空間カーステレオの世界でも(そんなことしてて、何かあったらどうするんだ、メーカーが責任とれるのか)という安全優先で、音場空間再現という4チャンネルステレオは下火になって行くというのが歴史的推移だが、その技術はドルビー・サラウンドなどで現在の5.1チャンネルホームシアター等に引き継がれているのでありおりはべり、いまそかり。

良いお年をお迎えください。

 

 

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